近年、訪日外国人の増加などの影響から、世界に日本の農作物のすばらしさが広まりつつあります。しかし、日本の農業は今、さまざまな課題を抱えており、将来性に不安をもつ農業関係従事者も少なくありません。本記事では、日本の農業が抱える課題とその解決策について解説します。
更新: この記事は、業務マネジメントの視点から、デジタルツールがどのように日本の農業の課題解決の糸口となるのか、そのヒントに関する記述を含めて 2025年 5月に改訂されました。
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日本の農業が抱える問題は数多くあります。その中でも特に主要と言われる課題について考えてみましょう。
日本の多くの産業で少子高齢化に伴う後継者不足が問題になっていますが、農業も例外ではありません。
農林水産省が公表した「農業労働力に関する統計」によると、基幹的農業従事者 (仕事として主に自営農業に従事している者) の平均年齢は、2015年が 67.1 歳、2022年が 68.4 歳と高齢化が長く続いていることがわかります。これは、農業就業人口に占める高齢者の割合が高まっていることを示しており、農業の担い手不足の根本要因の一つです。
そのため、今まで若い担い手を増やすために労働環境の改善や研修生の受け入れなどを積極的に行ってきましたが、農家数における成果はあまり見られません。先ほどの統計でも、基幹的農業従事者の数は、2015年が 175.7 万人だったのに対し、2022年は 122.6 万人まで減少しています。
この離農の多くは高齢により農業が続けられなくなったことによるものです。ほかにも農業は自然環境に左右されやすく生計が成り立たない、農作物の育成は数値化するのが難しいため知識や技術が伝承しにくいといったことが要因として考えられます。
さらに問題なのが、新規就農者が思うように増えないことです。農業は初期投資が高額で収入が得られるまでに時間がかかり、場合によっては災害などの影響で収入を得られない可能性があります。そのため、農業の新規参入をあきらめる人も少なくありません。農林水産省が発表した「令和 3 年 新規就農者調査結果」では、令和 3 年の新規就農者は 5 万 2,290 人で前年に比べて 2.7 %減少しています。
このように年々離農する農家が増加する反面、新規就農者が増えないこともあり、高齢化と担い手不足の問題は、今後ますます深刻化する可能性が高いと考えられます。
かつて農地だったものの現在は農地として利用されていない「耕作放棄地」や「荒廃農地」の増加も課題となっています。この問題は長年認知されていましたが、解決には至っていません。なぜなら、耕作放棄地や荒廃農地が増加している主な原因が、基幹農業従事者の高齢化と後継者不足によるものだからです。
耕作放棄地を農地に戻すことは不可能ではありませんが、土壌を作物の栽培に適した状態に戻すのには時間と手間がかかるため、そのまま放置されているのが現状です。
このように農地が減少すると、日本の食糧自給率の低下をはじめ、おろそかな管理による雑草や病害虫の発生、ゴミの不法投棄などの問題に発展するおそれがあります。また、農地は自然災害時のリスクを軽減する役割も担っており、防災の観点からも再利用の活用や適切な管理が求められています。
TPP (環太平洋パートナーシップ) による価格競争の激化も、日本の農家が抱える課題です。TPP はアジア太平洋地域において貿易や交流の活性化を狙った協定です。その中で農業に影響を与えているのが、関税の撤廃です。農林水産省が発表した「TPP における農林水産物関税の最終結果」によると、農林水産物 2,594 品目のうち、2,135 品目の関税が撤廃されました。
つまり、TPP によって国内競争だけでなく、安価な外国産の農作物とも競争を余儀なくされ、「作っても売れない、売れても利益が上がらない」といった状況に陥る可能性があります。そのため、農業の効率化やコストの削減、独自の販路の確保といった対策が早急に必要です。
近年、気候変動による影響が農業現場にも顕著に表れ始めています。猛暑や豪雨、台風の激甚化と頻発化により、作物の生育障害や病害虫の拡大が起こりやすくなっています。
従来の農業カレンダーや栽培技術が通用しなくなりつつあり、特に中山間地域や露地栽培中心の農家では対応が困難です。生産計画の立て直しや技術の再構築が求められている中、農業経営の不確実性が高まっています。
さらに、気温の上昇や水資源の偏在によって、地域によっては特定作物の栽培継続自体が難しくなるケースもあります。こうした環境変化への適応には、品種改良や施設投資など中長期的な視点での対応が不可欠ですが、それにはコストと知識の両方が求められます。気候変動は農家個人の努力だけでは対応しきれない課題であり、今後は行政支援やデータ活用を含めた総合的な対策が必要となるでしょう。
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日本の農業が抱えている問題を解決し、日本の農業の未来を守るためには「スマート農業の実施」「農地や経営の大規模化」「農作物のブランド化」「持続可能な農業の促進」の 4 つの対策が有効です。
スマート農業とは、AI や ICT、IoT、ロボット技術などを取り入れた新しい農業です。高品質を守りながら省力化や軽労化が見込めることから、労働環境の改善や新規就農者の参入が期待できます。
スマート農業を可能にする製品としては、自動操舵できるトラクター、農薬や肥料などの散布や生育管理を可能にする農業用ドローン、スマートフォンなどで制御ができる自動水管理システム、農作業による体の負担を軽減するアシストスーツなどが挙げられます。
また、熟練農家の高度な農業技術を ICT 技術によって学習システムとして提供することで、技術の継承や新規就農者の早期技術取得を可能にします。
農地や経営を集約して規模を拡大することも、日本の農業を守る解決策です。いくつかの農地を集約し、共同経営で大型機械や管理システムを導入すれば、作業効率化が図れ、収穫量の増加によって所得の向上も期待できます。
ひとつの農家で行う場合には、農地バンクなどを利用することで使い勝手のよい土地が見つかりやすく、安心して規模を拡大できます。貸し手側にとっても安定した収入が見込め、耕作放棄地なる心配がなくなります。
また、大規模化に伴って法人化すれば、融資を受けやすくなる、税金対策ができるなどのメリットが得られます。
農作物に独自の名前やパッケージ、ロゴなどをつける「農作物のブランド化」も進められています。農作物をブランド化してほかの作物と差別化を図り、単価を上げることで小規模でも収益が見込め、TPP の競争対策にもなります。
さらに今の時代、X (旧 Twitter) や Instagram といった SNS やホームページなどを活用すれば、農家自身で農作物の特性を最大限にアピールできます。アピール活動を続ける中で素材にこだわる飲食店や小売店と契約できれば、より安定した経営が可能になるでしょう。
記事: SNS マーケティングとは?重要性、メリット、手法、進め方などの基礎知識を解説「SDGs (持続可能な開発目標)」は、国際的に取り組む課題として掲げられた目標です。この2番目の目標が「飢餓をゼロに」です。飢えをなくし、誰もが十分に食料を手に入れられるよう、地球環境を守り続けながら農業を進めることが求められています。
つまり、将来にわたって農業をするためには、土壌に負担のかかる連作や無理な品種改良、周辺環境にまで影響が出る農薬の使用などをやめ、環境にやさしい農業の実現に取り組む必要があるということです。これは、SDGs の 12 番目「つくる責任、つかう責任」の “生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう” にも関わることです。
また、日本の農業が持続的に成長を続けるためには、農業に携わる人が安定した収入を得て、農業を担い手が増えるような労働環境の整備が不可欠です。そのためには規格外野菜の有効活用や農産物の適正価格維持など、農家だけではなく自治体や国、消費者も一丸となって問題解決に取り組むことが求められます。
記事: 日本の自治体が抱える課題とは何か?解決策を事例付きで解説テクノロジーによって農業機械や栽培管理が進化する一方で、日々の作業を「どうマネジメントするか」という視点も、これからの日本の農業にとっては重要となってきます。高齢化や労働力不足が進む中、作業の可視化や効率化、従業員間の連携の強化は、農業経営にとって大きな課題です。
農業では、天候、作物、時期ごとに変化する作業内容を、経験と記憶に頼って運用しているケースが多くあります。しかしこのような状態では、作業の引き継ぎもスムーズにいかず、非効率的です。
ワークマネジメントツールを活用すれば、播種、施肥、収穫、出荷などをタスクとして管理し、誰が、いつ、何を行うのかを明確にできるため、仕事の属人化を防ぎ、作業品質の標準化が進みます。
農業人口の減少を補うために、地域内で協業や協働作業が求められる場面が増えています。そういったケースでも、たとえば Asana のようなデジタルツールを使えば、スマートフォン一つで作業の割り振りや進捗共有ができ、場所にとらわれないコラボレーションが実現します。農作業中の口頭の伝達ミスや情報の抜け漏れを防ぐだけでなく、若手やパートタイム従業員の即戦力化にも貢献します。
農業経営では、補助金申請、農薬使用記録、行政提出書類など「事務作業」が想像以上に多く発生します。このような、これまでは手作業で行ってきた作業をワークマネジメントツールで「タスク」として整理し、リマインダーや進行状況の管理を行うことで、書類業務の抜け漏れを防ぎ、精神的な負担を軽減できます。
スマート農機やセンサーといった「現場」のデジタル化が進む中で、今後は「組織運営」そのもののデジタル化が求められます。ワークマネジメントツールの導入は、農業の働き方を根本から変える第一歩かもしれません。
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無料で Asana を試す日本の農業には、農家の高齢化や人手不足、耕作放棄地の増加、TPP による競争激化といった課題が数多くあります。これらの課題を解決し、生産力を向上させるためには、スマート農業の推進や農地、経営の大規模化、農作物のブランド化が有効です。さらに、タスク管理や情報共有のような業務マネジメントからのアプローチも、これからの日本の農業には求められてくるでしょう。持続可能な農業の未来に向けて、現場と経営の両面から変革を進めていく必要があります。
作業スケジュール、タスクの進捗、人員配置、記録管理といった日々の業務を一元化する Asana は、農作業の「見える化」と「効率化」を実現します。現場の状況をリアルタイムで把握しやすくなり、情報共有のスピードも向上。結果として、組織全体の判断力と対応力が高まり、農業経営における意思決定が迅速になります。
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